お金持ちは何故シャンパーニュを飲むのか?


雑誌プレジデントは記事の質の低下が止まらない、昔はセブンイレブンの鈴木敏夫会長のビジネス術など、比較的役に立つような内容が多かったけれど、今では「東洋経済オンライン」並で週刊誌ばりだ。

なぜシェフは60万円のシャンパンでソースを作ったのか

ベンツの耐用年数から始まるこの記事は、自称フレンチシェフがシャンパーニュでソースを作ろうとして、最後は財閥のお客は良い。で締めくくられる。

成金の態度が悪いと言って、60万円のシャンパーニュを振る舞って貰えたにも関わらず、怒って客の頼んだボトルでソースを作ろうと言い出す訳だ。
こんな二流なフレンチに行く方がばかげている。

香りの繊細なシャンパーニュでソースが許されるなら、そのフレンチでは60万円のシャンパーニュにシナモンを入れてグリューワインを作るのも許されてしまう。
味への探究心と、客への八つ当たりを別にして考えなければいけない。

まず、シャンパーニュとは何か。しばしシャンパーニュ=スパークリングワインと勘違いされているが、広義にはスパークリングワインであっても、フランスのシャンパーニュ地方で認められたメゾンで無ければ名乗る事ができない。

スパークリングワインは、いわばジュースのような安物白ワインに炭酸ガスを挿入したような千円以下のカヴァ(スペイン)もあれば、イタリアのフランチャコルタ(瓶内二次発酵)、プロセッコ、アスティ(ガス挿入)など全てを表すワードである。

元記事のような、「お金を使いたいからシャンパーニュを飲む」という人も少なかれ居るが、実際にお金持ちが何故シャンパーニュを飲むかというと、「美味しいから」である。

普段、アサヒスーパードライしか飲まない人種には、年に一回の結婚式の招待でシャンパーニュを飲んでも味など全く分からないが、常日頃ランチでもディナーでもシャンパーニュを飲んでいるお金持ちにとっては、フルートグラスに鼻を近づけただけで、それがどのグレードのスパークリングが判断できる。

ネットでは「シャンパーニュの瓶に、安いスパークリングを入れて誤魔化せば良い」と書くような輩も居るが、フレンチに行き慣れた人にとっては、玉露を頼んで麦茶が出てくるようなものだ。

後半の話では、「数千円のワインでも満足」とあるが、これがスパークリングの話だと、モエ・エ・シャンドンを始め、ヴーヴ クリコ、ポメリー、ボランジェのノンビンテージが1〜2本は買える。赤ワインであってもメドック地区格付けの3級カロン・セギュールやシャトー・ラグランジュも手に入る。
BYO(Bring Your Own)と呼ばれるワイン持ち込みをすれば、決まった手数料でフレンチで数千円の美味しいワインが飲める。

それに、昔は市販価格の3倍と言われたフレンチのワイン代も、現在では回転率を重視してボトル代+3000円など、つい頼んでしまう程に手頃な価格で提供する店が増えている。

つまり、シャンパーニュであっても赤ワインであっても数千円あれば格別美味しいワインを飲むことが可能なのだ。
また店のオーナーは、出来る範囲内で客が飲みたい物を出すのが最も顧客満足度を上げる方法であって正しい。

「この料理にはアリゴテが合う」と言われても、そもそもアリゴテが嫌いであったり、白ワインが嫌いな客には赤ワインを出せば良いのだし、料理にビールや梅酒でも客が楽しめるなら最も正しい選択と言える。

60万円のシャンパーニュ(ビンテージ)が飲みたい顧客には、頼まれた物を出せば良いのであって。美味しければ何でも良いというお金持ちには1万円〜5万円あれば十分に美味しいシャンパーニュ、赤ワイン、白ワインが用意できる。
またお金のない顧客には、クレマン・ド・ブルゴーニュやクレマン・ド・ロワールなどの泡、もしくは香りや味わいがシャンパーニュに近いヴァン・ムスーの低価格帯(3千円〜6千円)を出してあげれば良い。
シェフは、本当の意味で顧客のニーズに答えるべきである。

また、お金持ちがシャンパーニュを頼むのは、それをむやみにひけらかしてお金持ちをアピールしたいのではなく、気分で変える香水や、自室に飾る花束と同じように。
一般人で例えれば、スターバックスのメニューを見て「今日はコーヒーでいいや」「今日はちょっと高いけど、ベイクドアップルフラペチーノを頼もう」と言った程度で、その瞬間に飲みたいもを選んでいるだけである。